ちゅうぱぁちゃっぷす1話Aprt

ちゅうぱぁちゃっぷす1話Aprt

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
恍は考えている。もしこの地図の矢印がさっきもらったコンパスに書いてある『帽子屋さん』にむかっているなら逆ではないのか?しかし、ここはおそらく不思議の国だ(ほぼ確定だけど)こんなことで悩んだって先に進めないのではなかろうか?自分は少し悩みすぎなのだろうか?
「何を悩んでいる?少年よ」
後ろから上品で優雅なおやじの声がした。何事かと振り返っても、さっきもらった食料と手と足の生えてきた謎の玉子しかない。
「ハンプティ・ダンプティ?」
「いかにも。我輩はハンプティ・ダンプティだ」
ハンプティ・ダンプティ(以下・玉子)はそう言いながら振り返ってきた。どうやら今まで話しかけていたのは背中だったらしい。それにこの玉子ずいぶんと渋い顔だ。恍はそれを、夏休みの宿題を目の前にした少年のような顔をしてだまっている。
「少年よ、名は?」
”まただ。きっと名乗らないとまた話が進まない”そう悟った。だが、本名を告げるのは気が引ける。適当に答えよう。
「平野、平野 千雨(ひらの ちさめ)だ」
「チサメ?これは失礼した。女性であったか。このハンプティ・ダンプティ一生の不覚……」
「まぁ、そんなに気にしないで」
「そういう訳にもいかない。我輩自身がゆるせぬのだから・・・。」
玉子は悔やんでも悔やみきれないといったような顔をして、いつの間にか現れた高いレンガの塀に座り込んだ。
「落っこちて割れるぞ」
ちょっとした軽口のつもりだった。しかし玉子はハッと顔をあげ、とんでもないことをいいだした。
「そうだな、レディー。我輩を割ってみるか?ちょっとしたゲームだ」
「…断る、これでも尼(あま)なんでね。無駄な殺生は極力さけてるんだ」
「ふんっ。おかしなことを言うな、割れたぐらいじゃ我輩は死なん。ゲームだと言っておろう」
恍のぼやくような言葉を鼻で笑い、玉子は続けた。
「では、スタートだ」
玉子の言葉と同時に、どこからともなくレンガが跳んできた。
「言い忘れたが、全力を待って抵抗するぞ。もちろん、逃げることも許さぬ。」
「…割られたいのか割られたくないのか、はっきりしろよ,,,」
そんな不服を小さく言いながらも、レンガをよけ、玉子に近ずいてゆく、恍の動きにあわせてあの白く長い髪も揺れているがかすりもしない。かなり余裕に塀に近づき、玉子の高さまで跳びあがる。
「はいっ、お終い」
恍は全力で玉子を殴った。確実に終わらせるためだ。しかし、手には殴った感触しかない。割れたかんしょくがないのだ。
「レディー、紳士の誘いを適当にあしらうのはどうかと、、それでは我輩をこの塀から落とすのは無理ですよ」
玉子は呆れた顔をして恍をみている。ヒビすら入っていない。あまりの出来事に恍は唖然としている。そこにすかさずレンガがミゾオチにはいり、数メートル吹っ飛ばされる。
「いった~、そりゃねぇだろ」
「ほおけている貴女がいけないのだ、油断禁物だぞ」
「というか、硬い」
「素手で割ろうとしたのか?無理でな話だ。我輩は『命の石』と同じ位の硬さだからな」
「命の石?」
「知らんのか?」
「あぁ」
「ならいい、そのうち知るはめになる」
「そうか」
「では、再開だ」
その言葉どうりレンガが飛んできた。一発目は避けたがさっきより速くなっている。そのせいでよけるので精一になり塀に近づきにくくなった。
10分ほど避け続け、ようやく塀のもとへたどりついた。
恍は
掛声とともに塀を蹴り砕いた。座っていた塀が消え玉子が地面に吸付けられていく。
「どうだ」と言わんばかりにニンマリと笑う恍に対して、玉子は実につまらなそうな顔をしている。
「甘いんですよ、」
玉子がつぶやくと、どこからともなくレンガが飛んできて塀の足りない部分を補い、元どうりになった。と同時に今までで無いほどに早いレンガが恍の体のあちこちにめり込んでゆく。今までにないほどの痛みが体を襲う。「うっ」のうえき声と共に、眼から一筋の血が流れた。恍の顔から明るさが消えた。
「おや!大丈夫ですか?やはり武器が要りますか?そういえばジャパニーズ・シスターだったかな?」
「?尼のことか?」
「まぁ、なんでもいい。とりあえずこれを受け取れ」
玉子がそう言うと、どこからともなくシャクジョウ(お坊さんが持ってる杖)が恍の目の前に現れた。
「いいのか?」
「もちろん。紳士に二言はない」
玉子の言葉を聞き、一度大きく深呼吸をしてからシャクジョウをつかんだ。すると、シャクジョウが薄く光りだし、その光はやがて恍の体を優しく包んでいった。
「言い忘れたけど、チサメの能力は武器を持つと発動するけど、あとはよくわからないんだよね」
恍は無関心な目で光る自分の体をみつめていた。そんなのお構えなしにレンガは飛んでくる。しかし、レンガは恍にぶつかるまえに大破した。玉子がそのさまを歓喜に溢れた目でみていると、恍が消えた。気がついたら体が宙に浮いていた。落とされたのでわない。今まで座っていた塀が、跡形もなく消え去っているのだ。すぐ目の前には、気だるそうな少女の表情がうかがえた。
「まだまだ、レンガならいくらでも創れますよ」
玉子の下にはいつの間にかレンガが敷き詰められている。
「どっちにせよ痛そうだけど?」
そう言いながらも、恍はとどめを刺そうとシャクジョウを天高く振り上げている。
「それのほうが痛そうだ」
「ごもっとも」
シャクジョウは、玉子をとらえたものの、割ることはできなかった。だが、レンガをぶち破り、地面に叩きつけるには十分だった。
玉子は地面に振れた所からヒビが入り、割れたいった。
「なぁ、玉子、何で本気を出さなかったんだ?」
「何のことだ?」
「玉子の能力は『創る』だろ?結構レベルの高い」
「いかにも」
「だったら、もうちょっとましな武器出せば良かったんじゃないのか?」
恍には、この玉子が、自分をなめていたとは思えなかった。
「…たとえ強い武器を創っても、この体では扱いきれんよ、、、おっと、時間だ、少し離れろ」
玉子は眼をつむり、強く光りだした。

 

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